アップデート 2003.3.18

競争的2種の微分方程式


 2種類の個体が互いに共存するのではなく、同じえさを巡って競争する生態系を考える。2種の個体数をxとyとする。資源量に限界があるえさを補食する場合には、それぞれロジスティックの成長モデルに従う。
dx/dt=(a−bx)x  (1)
dy/dt=(k−ly)y  (2)
 同一のえさを巡る競争により、1つの個体は、もう一方の個体の存在により減少する。その効果はもう一方の個体数に比例すると仮定する。すると微分方程式は
dx/dt=(a−bx−cy)x  (3)
dy/dt=(k−ly−mx)y  (4)
となる。

 まとめると記号を変更して
dx/dt=(a1+a2x+a3y)x (a1>0、a2<0、a3<0)
dy/dt=(b1+b2x+b3y)y (b1>0、b2<0、b3<0)
となる。
dx/dt=0  (5)
dy/dt=0  (6)
を満たす点がある時、その点を平衡点という。そこに達した解は、どちらも導関数が0であることにより、固体数は増加も減少もせず、一定の数にとどまる。さて連立方程式(5)(6)の解であるが、
(0,0)
(−a1/a2,0)
(0,−b1/b3)
が解であることは直ちに分かる。しかしこの平衡点では、少なくとも一方の種が存在しないことを表している。4つ目の平衡点は
a1+a2x+a3y=0 (7)
b1+b2x+b3y=0 (8)
の解であるから、Δ=a2b3−a3b2とおくと
((a3b1−a1b3)/Δ,(a1b2−a2b1)/Δ) (9)
である。

 直線(7)はx軸と(−a1/a2,0)、y軸と(0,−a1/a3)とで交わる。第1象限ではx>0であり、直線(7)より右の領域では、a1+a2x+a3y<0であるから、x'=(a1+a2x+a3y)x<0となり、x方向へは減少する。すなわち解曲線は右から左へ動く。また直線(7)より左の領域ではx'>0となり、x方向へは増加する。すなわち解曲線は左から右へ動く。

 一方直線(8)はx軸と(−b1/b2,0)、y軸と(0,−b1/b3)とで交わる。第1象限ではy>0であり、直線(8)より上の領域ではb1+b2x+b3y<0であるから、y'=(b1+b2x+b3y)y<0となり、y方向へは減少する。すなわち解曲線は上から下へ動く。また直線(8)より下の領域ではy'>0となり、y方向へは増加する。すなわち解曲線は下から上へ動く。


(A)共存する場合
 さて、平衡点が第1象限にある1つのケースは、は、−a1/a2<−b1/b2であり、かつ−a1/a3>−b1/b3である場合である。2直線で区分された4つの領域で、解曲線がxとyのどの方向に進むか図示してみると、どこから出発した解曲線も、平衡点(9)に近づくことが分かる。

 

 領域1では、x'<0、y'<0であるから、領域1内の点は常に、左下方に進む。いずれ曲線(7)または(8)と交わることになる。曲線(7)上ではdx/dt=0であるから、解曲線はy軸に平行であり、下方に進む。一方、曲線(8)上ではdy/dt=0であるから、解曲線はx軸に平行であり、左方に進む。同様に、領域2では、x'>0、y'>0であるから、右上方に進み、曲線(7)または(8)と交わる。さて、領域2の部分では、x'>0、y'<0であるから、右下方に進む。この場合、曲線(7)とも(8)交わることができないので、曲線(7)(8)の交点に向かう。だからこの点は安定な平衡点となる。領域4にある解も同じ平衡点に進む。

 a1=1、a2=−1、a3=−1、b1=1、b2=−0.75、b3=−1.5のときのベクトル場を示す。((a3b1−a1b3)/Δ,(a1b2−a2b1)/Δ)=(2/3,1/3)に方向ベクトルが向いている様子が伺える。いろいろな場所をを初期値とする解曲線を示す。全ての解曲線は平衡点(2/3,1/3)に向かって行くことが予想される。相平面上での解曲線は次の図のようになる。

 

(B)不安定な平衡点の場合
 ところで、平衡点が第1象限にある2番目のケースは、−a1/a2>−b1/b2であり、かつ−a1/a3<−b1/b3である場合である。2直線で区分された4つの領域で、解曲線がxとyのどの方向に進むか図示してみると、どこから出発した解曲線も、平衡点(9)に近づく様に見えるが、時間の経過と共にどちらかの種が死滅することが分かる。どちらの種が死滅するかは、初期値の取り方による。すなわち最初の個体数によって、どちらが生き残るか決定されている。a1=1、a2=−1、a3=−1、b1=1、b2=−2、b3=−0.5のとき、いろいろな点から出発した解曲線は、一時、平衡点((a3b1−a1b3)/Δ,(a1b2−a2b1)/Δ)=(1/3,2/3)の方向に向かうが、時間の経過と共に種xが死滅して(0,−b1/b3)=(0,2)に向かうか、または種yが死滅して、(−a1/a2,0)=(1,0)に向かう。2種のうちどちらが死滅するかは初期値に依存する。相平面上での解曲線は下の図のようになる。

(C)種yが死滅する場合
 −a1/a2>−b1/b2であり、かつ−a1/a3>−b1/b3である場合は、初期状態がどんな値であっても、種yが死滅し、種xだけが生き延びる。a1=1、a2=−1、a3=−1、b1=1、b2=−1.2、b3=−1.5のとき、解曲線は、平衡点(−a1/a2,0)=(1,0)向かって行く。相平面上で解曲線を描けば下の図のようになる。

(D)種xが死滅する場合
 −a1/a2<−b1/b2であり、かつ−a1/a3<−b1/b3である場合は、初期状態がどんな値であっても、種xが死滅し、種yだけが生き延びる。

問題1:(A)の場合、領域2または領域3から出る解曲線は、何故直線(7)(8)と交わることができないか。説明せよ。
問題2:(B)の場合、直線(7)(8)を図示し、解の動きを考察せよ。
問題3:(D)の場合の解曲線を描け。

参考文献:R.ハーバーマン著、稲垣宣生訳、生態系の微分方程式、現代数学社
参考文献:森田善久著、生物モデルのカオス、朝倉書店
参考文献:D.バージェス、M.ボリー著、垣田高夫、大町比佐栄訳、微分方程式で数学モデルを作ろう、日本評論社