アップデート 2006.4.28

崩壊過程


 マルサスの成長の方程式
x'=ax
でa<0の場合、a=−k、(ただしK>0)とおくと
x0=x(t0)
を初期値とする解は
x(t)=x0eat=x0e-ktとなる。
x0は初期人口であるからx0>0である。このとき
lim x(t)=lim(x0e-kt)=0
x→∞  x→∞
であるから、人口は時間とともに減少し、そのうちに絶滅することとなる。負の成長をする微分方程式のベクトル場を次の図に示す。解曲線とは、ここに表示されたベクトルに接する曲線のことである。

 放射性物質が放射線を放出する過程も、この微分方程式に従う。このことから、負の成長率で示される微分方程式を崩壊過程という。

 この崩壊過程の方程式をルンゲ_クッタ法で解いてみる。
 崩壊過程の解曲線を表すEXCELのシートは次のようになる。これはセルB5に与える数値が負になっていることを除けば、マルサスの人口論と同じである。ルンゲ_クッタ法をマクロで記述した効果がここに現れている。

 セルC2とセルD2は作業領域でありエクセルが自動的に計算した結果が表示されている。ここには何も書き込まないこと。セルF2にはセルF3に表示してある数式 =B5*D2 を半角文字で書き込む。セルB5はキーボードから打ち込んでも、マウスでセルB5をクリックしても良い。F2には計算結果が表示されている。
 解曲線のグラフを次に示す。


 個体数が2分の1倍になるまでの時間Tを求めてみよう。
x0/2=x0e-kT
を解けばよい。両辺をx0で割ると
1/2=e-kT
となる。両辺の対数をとると
−log2=−kTであるから
T=(log2)/k
となる。これを半減期という。半減期は初期値によらないで比例定数kのみによって決まる。この比例定数kを崩壊定数という
 EXCELでは、自然対数log2をLN(2)で表す。例えばセルB6に、比例定数kの値を与えているとき、セルB7に =ln(2)/B6 と打ち込めば半減期Tの値が、セルB7に表示される。

複数の曲線を同時に図示する方法
 係数の変化に伴う解曲線の違いを1つのグラフで図示する方法について説明する。崩壊曲線のデータをsheet1で計算する。Sheet2にその結果を保存しよう。
 まず、Sheet2のセルB1、C1、D1、E1に崩壊定数aの値を書き込む。書き込んだ値は、後ほど凡例として示されることになる。sheet1でa=-1のとき、ボタンをクリックすれば、tとxの値がセルC4からセルD39までに表示される。この範囲をSheet2のセルA2からセルB32までに複写する。
 次にsheet1でa=-2のときの値がセルC4からセルD39までに表示される。列Cは時刻であるので、変化していない。列Dはx値が違って表示される。sheet1のセルD4からセルD39までを、Sheet2のセルcC2からC32までに複写する。これでSheet2には3つの列に値が複写される。このようにしてa=-3のときのsheet1の列Dの値をSheet2の列Dに、a=-4のときのsheet1の列Dの値をSheet2の列Eに複写する。
 セルA1からセルE37までの範囲を指定してグラフを描くと、凡例が表示され、4本の曲線が図示される。凡例を表示する位置を分かりやすい場所に指定する。


 放射性元素が崩壊するとき、比例定数kをその元素の崩壊定数という。現在の原子数から半分になるまでの時間を半減期という。
主な物質の半減期
キセノン133   5日
バリウム140   13日
鉛210      22年
ストロンチウム90 25年
炭素14      5568年
プルトニューム  23103年
ウラン      4.5×109

問題1 ラジウムの半減期を1600年とするとき、崩壊定数kを求めよ。
問題2 ラジウムは最初の100年間に何%崩壊するか。
問題3 ラジウムが最初の量の10分の1になるまでの時間を求めよ。
問題4 コーヒーの温度と室温の差をx(t)とする。温度差x(t)の減少率は、温度差x(t)に比例する。最初の差が60℃あったコーヒーが10分後には、温度差が20℃になったとする。1分間の減少率を求めよ。
問題5:自分で問題を考えて、自分で解け。
参考文献:小森康雄、死亡推定時刻
参考文献:デヴィット・バージェス/モラグ・ボリー、微分方程式で数学的モデルを作ろう、日本評論社