アップデート 2007.7.11
極限周期軌道
2階微分方程式
x"+f(x)x'+g(x)=0 (1)
において、f(x)は実数値関数、g(x)は実数値奇関数でともに連続であり
x≠0に対してはx・g(x)>0
G(x)=∫0x g(t)dt →∞ (x→∞)
F(x)=∫0x f(t)dt →∞ (x→∞)
とする。さらに、あるa0が存在して
F(x)<0 (0<x<a0)
F(x)>0 (a0<x)
で、かつ、x>a0においては、F(x)は単調増加であると仮定する。(このような方程式をリエナールの方程式という)。そのとき、微分方程式の解曲線は、時間の経過と共に、ある周期解に近づく。この解曲線は極限周期軌道という。この極限周期軌道は、時間tに関する移動を度外視すれば、ただ一つしかない。この安定な振動解をリミットサイクル振動と言う。
例 ファン・デル・ポルの方程式
空気抵抗のような摩擦力は、運動を妨害するように働く。そのため抵抗がある場合、振動は減衰してエネルギーを失い、ついには止まってしまう。しかし負抵抗といわれる、振動を増幅する方向に働く力も考えられる。バイオリンの弦を弓で擦る場合がその例である。このような振動を自励振動という。ファン・デル・ポル(van
der Pol)が真空管を使った電気振動の発信回路の研究から得た方程式は、x2<1のときは負の抵抗が働き、x2>1のときは正の抵抗が働いている。
x"+μ・(x2−1)x'+x=0 (μ>0)
微分方程式(1)に当てはめると
f(x)=μ(x2−1)
g(x)=x
となるから
x≠0に対してはx・g(x)=x2>0
G(x)=∫0x g(t)dt =∫0x
tdt=x2/2→∞ (x→∞)
F(x)=∫0x f(t)dt =μ∫0x
( t2−1)dt=μ(x3/3−x) →∞ (x→∞)
となり、リミットサイクルを持つことがわかる。
このファン・デル・ポルの2階微分方程式を解くためには、連立微分方程式に変更する
(2) x'=y
(3) y'=−f(x)y−g(x)=−μ(x2−1)y−x
となる。
μ=1、h=0.2のとき、x(0)=1、x'(0)=0から出発した解は時間tを横軸にとると下図の様になる。t=0とき1から次第に減少する太いの曲線が変位x、t=0のとき0から減少する細いの曲線が速度x'すなわちyである。

これを横軸にx、縦軸にx'すなわちyをとる相平面で表すと、点(1,0)から出発した解が次第に極限周期軌道に近づいてゆく様子が分かる。

問題1
ファン・デル・ポルの微分方程式で係数μの値を変化させて、曲線がどのように変化するか考察せよ。
問題2
x'=y+x(1−r2)
y'=−x+y(1−r2)
ただしr2=x2+y2
の解曲線を図示せよ。初期値をいろいろ変えてみて、極限周期軌道が単位円になることを確かめよ。
問題3
問題2の微分方程式を極方程式に直すと
dr/dt=r(1−r2)
dθ/dt=−1
となることを示せ。
問題4
問題2の微分方程式の極限周期軌道が単位円であることを、説明せよ。
問題5
x'=y+xr(r2−1)2
y'=−x+yr(r2−1)2
ただしr2=x2+y2
の解曲線を図示せよ。初期値をいろいろ変えてみて、極限周期軌道が単位円になることを確かめよ。
問題6
問題5の微分方程式を極方程式に直すと
dr/dt=r2(r2−1)2
dθ/dt=−1
となることを示せ。
問題7
問題5の微分方程式の極限周期軌道が単位円であることを、説明せよ。
問題8
問題5の微分方程式の極限周期軌道より外側から出発した解が発散することを説明せよ。
問題9
x'=−y+x(1−r2)/r
y'=x+y(1−r2)/r
ただしr2=x2+y2
の解曲線を図示せよ。初期値をいろいろ変えてみて、極限周期軌道が単位円になることを確かめよ。。
問題10
問題9の微分方程式を極方程式に直すと
dr/dt=1−r2
dθ/dt=1
となることを示せ。さらに
r=1、θ=t+Cは解である。すなわち単位円周は周期解となる。単位円周上にない点から出発した解が、単位円周に近づいてゆく様子を観察せよ。
参考文献:村上温夫、微分方程式入門、新曜社
参考文献:R・ローゼン著、山口昌哉、重定南奈子、中島久男訳、生物学におけるダイナミカルシステムの理論、産業図書