アップデート 2010.4.19
ロジスティック曲線
マルサスの法則は
x'/x=a
であった。つまり、人口xあたりの増加率が一定であるという前提であった。しかしこれは人口が指数関数的に増大することを表しており、現実とは合わない。人口が増加すれば、人口を抑制する力が加わると考えた方が良い。そこで
x'/x=R(x)
というモデルを考える。人口xが小さいとき、成長率R(x)は環境の影響を受けない成長率、すなわち定数aに近く、人口xが増加するとより低い成長率でしか成長しない。非常に大きな人口に対しては成長率は負になる、そこで
R(x)=a−bx
という、マルサスの係数が、総人口の1次関数になっているモデルを考える。この場合、微分方程式は
x'/x=a−bx, a>0, b>0
または、xを掛けると
x'=(a−bx)x
となる。
この方程式を、パールの微分方程式またはロジスティック方程式(logistic equation)という。 aは増殖率またはマルサス係数であり、環境的影響を受けない成長率である。 bは混雑定数(crowdness constant)である。この微分方程式はxについて1次ではないので、非線形(Non_linear)の微分方程式になる。半線形(Semi_linear)の微分方程式ともいう。ロジスティック方程式のベクトル場を次に示す。
x(0)=x0<a/b
の場合に解く。
(a−bx)x
で両辺を割り、dtを掛けると
dx/{(a−bx)x}=dt
となり、変数分離型である。左辺を部分分数に分解する。
1/{(a−bx)x}=(b/{a(a−bx)}+1/ (ax)
であるから
(b/a)∫{1/(a−bx)}dx+(1/a)∫(1/x)dx=∫dt
となる。積分する。
(b/a)(−1/b)log|a−bx|+(1/a)log|x|=t+C1
a倍する。
- log|a−bx|+log|x|=at+aC1=at+C2 ただし C2=aC1
対数の計算法則を使う。
log|x/(a−bx)|=at+C2
両辺の指数をとる。
x/(a−bx)=±exp(C2)eat=C3eat ただし C3=±exp(C2)
a−bx倍する。
x=aC3eat−bxC3eat
x(1+bC3eat)=aC3eat
x(e-at+bC3)=aC3
関数xについて解く。
x=aC3/(bC3+e-at)=a/(b+C4e-at) ただし C4=1/C3
初期条件として、t=t0のとき、xに小さな初期値x0を代入する。すると、微分方程式の初期値問題の解は
x=a/{b+(a/x0−b)e-a(t-t0)}
となる。条件x0<a/bにより、a/x0−b>0である。人口x(t)は常に増加するが、
lim x(t)=a/b
t→∞
となり、定数a/bを超えることはない。定数a/bは飽和状態を表す定数で、環境容量という。 解曲線のグラフはS字型曲線(sigmoid)となる。これは、成長と飽和の現象を記述するシステムである。微分方程式x'=(a−bx)x=0はx=0およびx=a/bという定常解を持つ。このようなxの値を平衡点という。x=a/bは上で述べたように時間の経過とともにxが近付く値であるからx=a/bという平衡点は漸近安定であるという。一方x=0に近い点から出発した解はしだいにx=0から遠去かる。x=0ような平衡点を不安定な平衡点という。
注意:0.000656978と書いてある欄(F2)に、=(B5-B6*D2)*D2 と計算式を書くこと。計算式は半角英数字を使用すること。大文字でも小文字でもかまわない。(F3)はメモであり、実際計算には関係ない。

問題1:x(0)=x0>a/bのとき、解曲線はどのように振る舞うか、図示せよ。
問題2:ロジスティックの微分方程式 x'=(a−bx)x の両辺を時間変数tで微分し、2次導関数x"(t)を求めよ。
問題3:変曲点(x"=0を満たす点(t,x)のこと)でのx(t)値はいくらか。
問題4:変曲点は図の中では何処にあるか、問題3の解答と合っているか、確認せよ。
問題5:a>0、b>0とする。次の微分方程式はどのような成長モデルを記述したものと考えられるか。
(1) x'=(−a+bx)x
(2) x'=(−a−bx)x
(3) x'=(a+bx)x
問題6:人間の病気のモデルとして、次のどれが適当であると思うか。そして、その理由を述べよ。ただしxは病気に感染した個体数であり、Xは人間の総個体数である。
(1) x'=ax
(2) x'=a(X−x)x
(3) x'=a(x−X)x
問題7:ロジスティックの微分方程式はdx/dt=(a−bx)xであった。これは生物の自然増加を表している。この生物を人間が一定の割合c(0<c<1)で捕獲するとする。このときの微分方程式はdx/dt=(a−bx)x−cxとなる。この解についてどのようなことが分かるか。
問題8:問題7でx(t)の解析解を求め、tが大きくなるとき、x(t)の収束値を求めよ。
問題9:ロジスティックの微分方程式はdx/dt=(a−bx)xであった。これは生物の自然増加を表している。この生物を人間が一定の数量cで捕獲するとする。このときの微分方程式はdx/dt=(a−bx)x−cとなる。この解についてどのようなことが分かるか。人間が捕獲する個体数cは、生物の個体数xを越えることはできない。cはxに比べて、かなり小さいと考えなければならないであろう。
問第10:問題9で、tが大きくなるとき、x(t)の収束値の近似値を求めよ。
問題11:自分で問題を考えて、自分で解け。
参考文献:山口昌哉、非線型現象の数学、朝倉書店
参考文献:R.ハーバーマン著、稲垣宣生訳、生態系の微分方程式、現代数学社
参考文献:村上温夫、微分方程式入門、新曜社
学生の報告書からの感想
問題1の報告書で、刻み幅を1としたため、現実と大きく異なる解曲線が得られた。刻み幅はあまり大きくしてはならない。参考例はa=2,b=1,x0=0.01の時h=0.2が適当であることを示しているだけであって、係数や初期値を変更すると、刻み幅hも小さくする必要があるかも知れない。そのときはマクロを修正して、繰り返し回数を増やす必要があるかも知れない。x0>a/bのときという条件で、初期値x0を余りにも大きくすると、違った解曲線が描かれる恐れがある。