アップデート 2002.9.20
同次系の相平面(線形自励系)
a、b、c、dを定数とする。
dx/dt=ax+by
dy/dt=cx+dy
という連立線形微分方程式系を考える。この解をx=x(t)、y=y(t)とするとき、点(x(t),y(t))の軌跡は平面上の曲線を表す。この平面を相平面といい、解を描く曲線を解軌道という。定数関数x(t)=0、y(t)=0は連立線形微分方程式系を満たすから解である。これは特別な解である。点(0,0)を特異点または危点という。2次正方行列を
A=
2次元列ベクトルを
X=
とおく。連立線形微分方程式系を、行列で表現すると
dX/dt=AX
となる。ここで解を表すベクトルを
X=v0eλt
と仮定して、微分方程式に代入すると
λv0eλt=Av0eλt
となる。2次の単位行列をEとおくと、
(λE−A)v0eλt=0
となる。v0eλt≠0
であるとき、行列式に関して
det(λE−A)=|λE−A|=0
でなければならない。具体的に書くと
(λ−a)(λ−d)−bc=λ2−(a+d)λ+(ad−bc)=0
ここで
P=tr(A)=a+d
Q=det(A)=ad−bc
Δ=P2−4Q=(a−d)2+4bc
とおくと、2次方程式の2つの解は
λ1,2=(P±
)/2
となる。λ1,2を固有値、λV=AVを満たすベクトルVを固有ベクトルという。このようにして
A=
が正則行列である場合、これを正則行列Gを用いてJ=G-1AGの形のジョルダンの標準形に直すと、次の4つに分類される。λ、μを、固有方程式
det(A−λE)=λ2−Pλ+Q=0
の2つの解とする。
分類1 λ=(P±
)/2であるから、Δ>0のとき、λ1,2は異なる実数である。これらをλとμとする。λとμとが同符号であることと、|P|>
であることは同値である。P2>Δ=P2−4Qとなり、Q>0と同値になる。このときP>0はλとμが正数であることを意味し、P<0はλとμが負数であることを意味している。λとμのうち、どちらかが0であるとき、P=±
である。2乗するとP2=Δ=P2−4Qとなり、Q=0が成立つ。P>0はもう1つの実数が正であるであり、P<0はもう1つの実数が負であるである。λとμとが異符号であることQ>0であることは同値である。まとめると
|
型 |
Δ |
Q |
P |
λとμの関係 |
| (1−1) |
+ |
+ |
+ |
0<λ<μ |
| (1−2) |
+ |
0 |
+ |
0=λ<μ |
| (1−3) |
+ |
− |
任意 |
λ<0<μ |
| (1−4) |
+ |
0 |
− |
λ<μ=0 |
| (1−5) |
+ |
+ |
− |
λ<μ<0 |
となり、ジョルダンの標準形
(1) G=
(λ<μ)
となる。
(1−1) 0<λ<μ のとき点(0,0)を不安定な結節点(node)という。
例 x'=x
y'=ay (a>0)
それぞれ、線形微分方程式である。一般解は
x=Aet
y=Beat
変数tを消去すると
y=Cxa となる。t→∞のとき|x|も|y|も限り無く大きくなる。したがって、相平面上では、任意の点から出発した解曲線は、原点からしだいに遠去かる。原点(0,0)は、微分方程式を満たす特別な点であるが、原点(0,0)から極わずかに離れた2点を通る曲線は、時間の経過とともにしだいに離れてゆく。なおdy/dx=aCxa-1であるので、0<a<1のとき原点の近くでは、|dy/dx|の値が大きくなる。すなわち、曲線はy軸に寄り添うように描かれる。a>1のとき、原点の近くでは、dy/dx≒0である。すなわち、曲線はx軸に寄り添うように描かれる。図に示した微分方程式は
x'=2x
y'=3y
の解を8個の異なる初期値から解いたものである。解は全て原点から遠去かっている。

(1−2) 0=λ<μの場合
例 x'=0
y'=ay (a>0)
積分すると、
x=A
y=Beat
一般解はx=Aであり、y軸に平行(x軸に垂直な)直線群になる。図は
x'=0
y'=y
の解曲線である。t→∞のとき、|y|→∞であるから、x軸に近い点から出発した解でも、いずれx軸から遠去かっていく様子を示している。

(1−3) λ<0<μの場合、点(0,0)を鞍点という。(不安定である。)
例 x'=-x
y'=ay (a>0)
積分すると、
x=Ae-t
y=Beat (a>0)
y=Cxa
t→∞のときx→0、|y|→∞である。x軸の近くにある全ての解曲線は、x軸から遠去かる。原点(0,0)は、微分方程式を満たす特別な点であるが、原点付近から出発した解は原点付近に留まることはできない。なおdy/dx=aCxa-1である。図は
x'=−2x
y'=3y
のときの8個の異なる点から出発する解曲線を示している。

(1−4) λ<μ=0の場合
例 x'=ax (a<0)
y'=0
積分すると、
x=Aeat
y=B
一般解はy=Bであり、y軸に平行(x軸に垂直な)直線群になる。図に示した解曲線(直線)は、t→∞のときx→0であるから、y軸に向かっている。

(1−5) λ<μ<0 の場合、点(0,0)を安定な結節点という。
例 x'=−x
y'=ay (a<0)
積分する。
x=Ae-t
y=Beat
変数tを消去する。
y=Cx-a
t→∞のときx→0、y→0である。したがって、相平面上では、全ての解曲線は、原点に近づく。なおdy/dx=−aCx-(a+1)/であるので、a<−1のとき原点の近くでは、|dy/dx|の値が大きくなる。すなわち、曲線はy軸に寄り添うように描かれる。−1<a<0のとき、原点の近くでは、dy/dx≒0である。すなわち、曲線はx軸に寄り添うように描かれる。図は
x'=−4x
y''=−y
の場合の解曲線であり、全ての解曲線は原点に向かう。

分類2、3 λ=(P±
)/2であるから、Δ=P2−4Qのときは2重解となる。このときJ=G-1AGの形のジョルダンの標準形は(2)と(3)の2つの形になる。まとめると
|
型 |
Δ |
P |
Q |
λ |
(1,1)成分 |
| (2−1) |
0 |
+ |
P2/4 |
+ |
0 |
| (2−2) |
0 |
− |
P2/4 |
− |
0 |
| (3−1) |
0 |
+ |
P2/4 |
+ |
1 |
| (3−2) |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
| (3−3) |
0 |
− |
P2/4 |
+ |
1 |
となる。
(2)
(λ≠0)
(3)
(λ≠0)
(2−1)
、λ>0のとき、点(0,0)を星形結節点という。
例 x'=x
y'=y
それぞれ積分する。
x=Aet
y=Bet
変数tを消去する。
y=Cx
t→∞のとき|x|も|y|も限り無く大きくなる。したがって、相平面上では、全ての解曲線は、原点を通る直線に沿って原点から遠去かる。

(2−2)
、λ<0の場合
例 x'=−x
y'=−y
それぞれ積分する。
x=Ae-t
y=Be-t
変数tを消去する。
y=Cx
t→∞のときx→0、y→0である。したがって、相平面上では、全ての解曲線は、原点を通る直線に沿って原点に近づく。

(3−1)
、λ>0の場合
例 x'=ax+y (a>0)
y'=ay
第2式を積分する。
y=Aeat
第1式に代入する。
x'−ax=Aeat
線形微分方程式の解の公式より
x=eat{∫Aeate-atdt+B}
=eat(At+B)
=y{(1/a)log|y|+B/A}
=y(C1log|y|+C2)
この曲線は、対数螺旋である。図では解曲線が原点から遠去かっている様子を示している。

(3−2)
、λ=0の場合
例 x'=y
y'=0
第2式を積分する。
y=A
第1式に代入する。
x'=A
積分する。
x=At+B
この曲線x軸に平行な直線群である。初期値を(a,b)とする解曲線は
x(t)=bt+a
となる。x軸から離れているほど速く進む。y>0のとき右方向へ、y<0のとき左方向へ進む。

(3−3)
、 λ<0の場合
例 x'=ax+y (a<0)
y'=ay
第2式を積分する。
y=Aeat
第1式に代入する。
x'−ax=Aeat
線形微分方程式の解の公式より
x=eat{∫Aeate-atdt+B}
=eat(At+B)
=y{(1/a)log|y|+B/A}
=y(C1log|y|+C2)
この曲線は、対数螺旋である。
limy(t)=0
t→∞
であるから任意の初期値から出発した解は全て原点に向かう。

分類4 λ=(P±
)/2であるから、Δ=P2−4Q<0のときは共約な複素数解となる。このときJ=G-1AGの形のジョルダンの標準形は
|
型 |
Δ |
P |
α |
λ |
(1,1)成分 |
| (4−1) |
− |
+ |
+ |
+ |
0 |
| (4−2) |
− |
0 |
0 |
− |
0 |
| (4−3) |
− |
+ |
- |
+ |
1 |
となる。
(4)
(β>0)
(4−1) α>0 の場合、点(0,0)を不安定な渦心点または(渦状点)(focus)という。曲線は対数螺旋となる。解曲線は原点から遠去かる方向に進む。

(4−2) α=0の場合、点(0,0)を中心または渦心点(center)という。(安定である。)
x'=2y
y'=−2x
のとき、解曲線は円軌道であり、時計の針の進行方向に進む。

(4−3) α<0 の場合、点(0,0)を安定な渦心点または(渦状点)(focus)という。曲線は対数螺旋となる。任意の点を出発した解は原点に向かう。

(0,0)の近くで、次の微分方程式の解の様子を調べよ。
問題1
x'=x
y'=y
問題2
x'=x
y'=3y
問題3
x'=−x
y'=x−2y
問題4
x'=y
y'=−x+y
参考文献:村上温夫、微分方程式入門、新曜社