アップデート 2003.9.13

宙返りする紙飛行機


 紙飛行機が宙返りする微分方程式を考えてみる。

 xを水平方向の変位、zを垂直方向の変位とする。紙飛行機はx−z平面を運動するとする。すなわちy方向には移動しないとする。初速度v0で投げられた紙飛行機の速度をvとし、θをx方向から計ったv方向の角とすると、x方向の速度dx/dtと、z方向の速度dz/dtは
(1) dx/dt=v*cosθ
(2) dz/dt=v*sinθ
で与えられる。この紙飛行機には、進行方向と垂直に揚力Lが働く。揚力Lは速度vの2乗に比例する。
(3) L=αv2
ここで、係数αは
(4) α=ρACL/2
である。ρは空気密度、Aは主翼面積、CLは揚力係数である。 進行方向と逆向きに働く抗力Rを無視すると、x方向の運動方程式は、
(5) mdx2/dt2=−Lsinθ=−αv2sinθ=−αvdz/dt
であり、z方向の運動方程式は、重力加速度gがz軸の負の方向に働くから、
(6) mdz2/dt2=−mg+Lcosθ=−mg+αv2cosθ=αvdx/dt−mg
となる。整理すると
(7) x"=−αvz'/m
(8) z"=αvx'/m−g
となる。エネルギー保存の法則から、
(9) mv2/2+mgz=mv02/2
が成り立つ。速度vに付いて解くと、
(10) v=sqrt(v02−2gz)
となる。SQRTとは、正の平方根を表す関数である。

xとzに関する2階2元微分方程式系であるが、これを1階4元の微分方程式系に変形する。
(11) dx1/dt=x2
(12) dx2/dt=h*x4
(13) dx3/dt=x4
(14) dx4/dt=h*x2−g
(15) h=α*sqrt(x'02+z'02)/m
ここでは式(10)ではなく、式(15)を用いた。



EXCELのシートは以下のようになる。

A

B

C

D

E

F

G

H

I
1 宙返りする紙飛行機 v=sqrt(x'02+z'02)  h=βv  x"=−hz'  z'=hx'−g h(v0,g,z) 12.82269278
2 変数t0 0 0.588 0.49 3.71 0.159 4.326 f1(t,x,x',z,z') 3.709542465
3 関数x0 0 変数t 変数x 変数x' 変数z 変数z' f2(t,x,x',z,z') −55.47590375
4 関数x'0 5.8 0 0 5.8 0 1.4 f3(t,x,x',z,z') 4.326384847
5 関数z0 0 0.004 0.023 5.718 0.006 1.67 f4(t,x,x',z,z') 37.7663234
6 関数z'0 1.4 0.008 0.046 5.621 0.013 1.934 h(v0,g,z) =B18*SQRT(E2*E2+G2*G2)
7 刻み幅h 0.004 0.012 0.068 5.511 0.022 2.193 f1(t,x,x',z,z') =E2
8 重力加速度g 9.8 0.016 0.09 5.387 0.031 2.444 f2(t,x,x',z,z') =-I1*G2
9 空気密度ρ 1.2 0.02 0.111 5.251 0.041 2.688 f3(t,x,x',z,z') =G2
10 主翼面積A 0.01 0.024 0.132 5.102 0.052 2.923 f4(t,x,x',z,z') =I1*E2-B8
11 揚力係数CL 1.5 0.028 0.152 4.492 0.065 3.149
12 質量m 0.004 0.032 0.171 4.77 0.078 3.365
13 0.036 0.19 4.588 0.091 3.572
14 初速度V0 5.96657 0.04 0.208 4.396 0.106 3.767
15 =SQRT(B4*B4+B6*B6) 0.044 0.225 4.196 0.122 3.951
16 係数α 0.009 0.048 0.242 3.987 0.138 4.124
17 =B9*B10*B11/2 0.052 0.257 3.77 0.155 4.284
18 係数β 2.25 0.056 0.272 3.547 0.172 4.433
19 =B16/B12 0.06 0.285 3.318 0.19 4.568

初期条件は
t0=x0=z0=0である。
参考文献によれば
ρ=1.2kg/m3、A=0.01m2、CL=1.5、m=0.004Kg、v=6m/s
である。
セルB14には初速度V0
V0=sqrt(x'02+z'02)
で計算してある。数式はセルB15に表示してあるが、これはメモであり、計算には無関係である。セルB16には係数αを
(4) α=ρACL/2
で計算した。数式はセルB17に表示してあるが、これはメモであり、計算には無関係である。セルB18には係数βを
β=α/m
で計算した。セルI1には
v=sqrt(x'02+z'02) 、h=αv/m
を計算している。数式はセルB19に表示してあるが、これは作業領域であり、値は時々刻々変化する。


4元連立1階微分方程式を解く関数のマクロはここにある。

原点から出発した紙飛行機は、次第に高度を高め、再び手元に戻ってくる。ここで捕まえないと、宙返りを繰り返しながら、飛び去ってゆく。

 
問題1:水平方向に投げたらどのような軌跡を描くか。
問題2:垂直方向に投げたらどのような軌跡を描くか。
問題3:初期条件を変えて、軌跡の変化を観察せよ。
問題4:式(15)の代わりに、式(10)を用いたら、どうなるか。
問題5:抗力Rを無視したので、紙飛行機は永遠に回り続ける。速度と逆向きに働く抗力、R=−γvを考えると、解軌道はどうなるか。
問題6:水平方向に投げるとする。垂直方向には移動しないとする。その場合、重力は働かないと仮定して、解軌道を求めよ。
参考文献:吉田喜一:竹内香、ブーメランカミヒコーキが宙返りする条件、日本数学教育学会誌第84巻(第84回総会特集号)、p450,2002
参考文献:中山健司:浜嘉夫:中村竜也:浦野義匠:吉田喜一、子ども用遊具の理論解析−戻る紙飛行機−、都立航空高専2000年度研究紀要