アップデ−ト 2008.6.7

ヴォルテラの理論


 時刻tの時にサメに食べられる魚(被食種)の個体数をx(t)とする。サメのいない海域で、被食種x(t)だけを考える場合、被食種x(t)は非常に豊富にあるプランクトンを食べると仮定すると、被食種x(t)の成長率は一定であり、
x'/x=a1  (a1>0)
に従うと考えられる。
 一方サメ(捕食種)の総個体数をy(t)とする。被食種x(t)がいないならサメy(t)の食料は存在しない。サメの死亡率は出生率を超えるであろう。そこで成長率は負になる。サメのモデルは
y'/y=b1  (b1<0)
となる。
 被食種x(t)とサメy(t)の間の相互作用を考える。被食種x(t)の存在はサメy(t)の個体数を増加させる。サメy(t)の成長率は被食種x(t)の個体数に比例して増加するであろう、そこで
y'/y=b1+b2x  (b2>0)
が考えられる。一方、被食種x(t)にとっては、サメy(t)の存在が被食種の成長率を減少させる。この成長率に及ぼす効果はサメy(t)の個体数に比例すると考えると、
x'/x=a1+a2y  (a2<0)
となる。そこで、被食種x(t)と被食種を食べるサメy(t)との相互作用は、次の非線形連立微分方程式に従う。
x'/x=a1+a2y   (1)
y'/y=b1+b2x   (2)
 a1は被食種のマルサス的増加率である。 b1は捕食種が被食種が居ないため指数関数的に死滅する減少率である。 a2yは被食種が捕食種との出合いによる被食種の減少率である。 b2xは捕食種が被食種と出会うことによる捕食種の増加率である。
 連立微分方程式系(1)(2)を
x'=(a1+a2y)x
y'=(b1+b2x)y
と表現すると、(x',y')=(0,0)を満たす点は、(0,0)、(−b1/b2,−a1/a2)の2点である。しかしながら問題から、生物の個体数についてはx>0、y>0でなければならない。この条件を満たす点は(−b1/b2,−a1/a2)だけである。この点を平衡点、または停留点、または臨界点という。平衡点を初期値とする解曲線x(t)=−b1/b2、y(t)=−a1/a2は1点に留まったままである。この解曲線を定常解という。
 x>−b1/b2のときy'>0であるからyは増加し、x<−b1/b2のときyは減少する。同様にy>−a1/a2のとき、a2<0であるから、x'=(a1+a2y)x<0となり、xは減少し、y<−a1/a2のときyは増加する。このことから解曲線は、平衡点(−b1/b2,−a1/a2)の周りを時計の針の進行方向とは逆向きに回る。
−b1・(1)+a1・(2)を計算すると
−b1x'/x+a1y'/y=a1b2x−b1a2y  (3)
となる。一方
b2x・(1)−a2y・(2)を計算すると
 b2x'= a1b2x+a2b2xy
−a2y'=−a2b1y−a2b2xy
であるから
(b2x−a2y)'=a1b2x−a2b1y    (4)
となる。(3)(4)より
(b2x−a2y)'=a1b2x−a2b1y=(−b1・log(x)+a1・log(y))'
であるから、積分すると
b2x−a2y=−b1・log(x)+a1・log(y)+C  (5)
となる。
f(x)= b2x+b1・log(x) (6)
g(y)=−a2y−a1・log(y) (7)
とおけば、(5)は
f(x)+g(y)=C    (8)
となるから、問題6〜問題8までにより、(8)は閉曲線を描く。従って周期関数となる。周期をTとする。 (1)をtからTまで積分する。
0=logx(t+T)−logx(t)
=a1T+a2tt+Ty(t)dt
となり1周期に渡る個体数yの平均は初期値に関係しない値
−a1/a2=(1/T)∫tt+Ty(t)dt
となる。同様に(2)を積分すると
−b1/b2=(1/T)∫tt+Tx(t)dt
となる。

 連立微分方程式
x'=(a1+a2y)x
y'=(b1+b2x)y
を解くためのシートとマクロを次に示す。マクロでは、シートに記入されたセルの情報を読み書きしているので、シートの位置を変更してはならない。 

EXCELのシ−ト

A

B

C

D

E

F

G

1

共存する生物:x'=(a1+a2*y)*x,y'=(b1+b2*x)*y

2

変数t0 0 14.4 2.9581 0.7933 f(t,x,y) 0.611588817

3

関数x0 3 変数 t 関数 x 関数 y g(t,x,y) 1.553288554

4

関数y0 1 0 3 1 f(t,x,y) =(B6+B8*E2)*D2

5

刻み幅h 0.2 0.2 2.8671 1.4788 g(t,x,y) =(B7+B9*D2)*E2

6

係数a1 1 0.4 2.4577 2.0708

7

係数b1 −1 0.6 1.8736 2.618

8

係数a2 −1 0.8 1.3064 2.941

9

係数b2 1 1 0.8783 2.9879

10



1.2 0.5981 2.8292

途中省略


14.4 2.9619 0.7919

ピンク色のセルには、数値または数式を入力する。
G2には0.611588817と表示されているが、そこには計算式
=(B6+B8*E2)*D2を入力する。
G3には1.553288554と表示されているが、そこには計算式=(B7+B9*D2)*E2を入力する。
緑色のセルはメモであり、計算には関係ない。
肌色のセルは作業領域であり、EXCELが自動的に値を代入する。


関数が2個ある場合のルンゲ_クッタ法のマクロ


共存する生物の個体数変化
ボルテラ2


問題1 初期値x0>0、y0>0を変えて、曲線がどのように変化するか観察せよ。

問題2 係数a1>0、b1<0、a2<0、b2>0を変えて、曲線がどのように変化するか観察せよ。

問題3 ヴォルテラの理論は、サメの個体数y(t)と、サメに食べられる被食種の個体数x(t)との関係であった。ここで人間が、魚たちを漁獲する場合を調べる。人間が魚を捕る割合が、それぞれα>0、およびβ>0であるとすると、x'/xには−αという項が、y'/yには−βという項が加えられる。このとき、微分方程式は、どうなるか。その解の振る舞いを考察せよ。

問題4 漁業活動が衰えると、漁獲率が減少する。サメに食べられる被食種x(t)とサメy(t)に対する漁獲率が、それぞれα'(0<α'<α)およびβ'(0<β'<β)であるとする。このときx(t)とy(t)の個体数の変化について考察せよ。

問題5 x(t)を人間から見たときの益虫の個体数、y(t)をx(t)の天敵、すなわち益虫を食べる(人間から見た場合の)害虫とする。人間にとって、益虫x(t)が増加し、害虫y(t)が減少することが望ましい。そこで農薬を散布することにした。益虫と害虫はヴォルテラの理論に従って増減を繰り返している。農薬散布による減少率は、それぞれα>0、およびβ>0であるとする。農薬散布の結果について考察せよ。

問題6 式(6)において、f(−b1/b2)が最小値であることを示せ。

問題7 関係式(8)から、g(y)が上に有界である(無限大にならない、すなわち最大値がある)ことを示せ。

問題8 式(7)において、g(y)は最小値を持つことを示せ。

問題9 関係式(8)から、f(x)が上に有界である(無限大にならない、すなわち最大値がある)ことを示せ。


参考文献:山口昌哉、食うものと食われるものの数学、筑摩書房
参考文献:池上 博、昆虫採集で蝶はいなくなるか