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629 2020

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もし、異世界に転生したら、、、、?

みなさん、こんにちは。電気情報工学科の廣芝です。6月のブログという事ですが、なかなか書くことが思いつかず、月末が近づいてしまい勢いで書きはじめました。さて最近、ライトノベルス(いわゆるラノベ)では、「なろう系」小説というのが流行っているらしいですね。さて、私は「なろう系」小説には詳しくないのですが、基本的に(平凡な)主人公が、交通事故とか過労死とかで不幸にしてこの世を去ると、神様が異世界に転生を持ち掛けてくるのです。それが、スライムだったりスライムばっかり倒した長生き魔法使いだったりするというのが典型的なストーリーだそうです。大体の場合、現代日本社会の知識と経験を生かして異世界でヒーローになるわけですね。そんな話が好きなみなさんにお勧めしたい本があるので紹介したいと思います。すべて文庫本なので、ブックオフやメルカリ、Amazonなどで比較的安価に手に入ると思います。

  • 「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」河出文庫、ルイス・ダートネル(著)
  • 「ゼロからトースターを作ってみた結果」 新潮文庫 、トーマス トウェイツ  (著)

ちなみに2冊とも小説ではないですよ、残念ながら「なろう系」でもないです。実のところ、紹介した1冊目の本のタイトルはラノベっぽいですが、現代の科学文明の分析書でもあるので、ぜひ読んでほしい本です。

読んでいただければわかるのですが、今の人類の文明、科学は魔法と大差のないくらい充分に発展した状態に近づいています。テレビ会議、ドローン、レンジでチンするおいしい冷凍食品などなど、例を挙げればきりはありません。スマホに豪雨情報が来て、10分単位で予想してくれる。そういえば、先週の金曜ロードショーでは「バックトゥザフューチャー2」で未来(といっても2015年)に行って、いろんな未来技術が出てきました。実現したものもまだ実用化していないもの(空飛ぶ車とか)もあります。

そんな現代文明が、突然、人類滅亡寸前まで人口が減少したらどうなるかというのが一冊目の本です。くどいようですが、ディストピア小説ではありません。この文明や科学技術がいかに維持されているか、あるいはいかに絶妙なバランスで立っているか、が説明されています。

本書には人類が多様性を確保したうえで発展するための最低人数と、充分に労働力や機械化を進めるための手順が書かれています。異世界に転生した場合、現代文明を構築するのにどのような手順が必要かという手引書でもあります。試算によれば今の水準に戻るまで800年を要するとのことです。何より難しいのは知識の伝達です。なにせ、紙に書いても本があっても、知識を100%引き継げませんからね。みんな、教科書を読むだけで専門家になれないと、遠隔授業で実感したのではないでしょうか?

ちなみに知識体系の最新の研究結果というやつは、ここ20年でほぼ電子化されてます。紙媒体じゃなくオンライン論文というやつです。電気がなくなった時点で、最先端の2000年以降の主要な科学技術の進歩は、電子ネットワークから読み取れなくなります。ところが、「なろう系」のマンガやラノベ小説だとあっという間に、発明とイノベーションを繰り返し文明社会に近づいたり、科学を魔法で補ったりして極めて現代的な生活に至りますが、実はそんなことはあまり現実味がないのです。

詳しくは一冊目を読んでいただければわかりますが、もう一つの手がかりとなるのが、もう一冊の「ゼロからトースターを作ってみた結果」 です。

家電量販店や、ホームセンターで簡単に手に入る1000円足らずのトースターをすべて(部品の原料調達から)手作りするとどうなるか? という話です。これもよんでみると、とても面白い。鉄腕DASHのDASH島の開拓のようです。反射炉で鉄を溶かすとか、機械を使わずに、トロッコ作るとかのノリに近いですね。鉄は、5世紀ごろあたりから「たたら製鉄」で作られてますが、現代文明の材料で一番作るのが難しいとされているのが、プラスチックです。プラスチックの先祖は樹脂で、文字通り木の樹液を利用していたのが始まりですが、プラスチック、いわゆる「合成樹脂」が普及しだしたのは1970年代まで、待たねばなりません。それまでは、液体はガラス瓶、飲食物の包装容器は紙や木・竹材などでした。この本の、主人公はプラスチックをある意味ズルして作るわけですが、それでも、100均のプラスチック製品に到底及ばないものしか作れません。かくも、現代社会の工業製品はよくできているわけです。

さて、身の回りの普段使う道具について、例えば、ノートの紙、ボールペンのインク、服、スプーン、皿などを文房具屋さん、服屋さん、AmazonやRakutenなどで購入するとき、できるだけ安く、高品質なものを、と考えます。しかし今まで、お金を払うときに商品の生産コストや環境への影響のことを考えるでしょうか? ましてや原材料をどう確保し、どうやって加工し、なおかつ魅力ある商品に完成させた技術者たちのことなんて全く意識していないのではないでしょうか?

この2冊の本をよめば、エンジニアの、あるいは、現代の工業技術のすさまじさが実感できるのではないでしょうか? エンジニアになる、目指すという事は、一般人が気にも留めない事に目を向け、一つ一つ吟味し、製品の作り方を考える。そういう職業です。基本的に異世界に転生しても、現代のような工業製品はありません。異世界では電気回路が設計できてもトランジスタが作れない、電池も作れない、電線を確保できないものなのです。まぁ、「なろう系」小説ですと都合よく、妖精やドワーフから物々交換でチートアイテムをもらえたりするんでしょうか? これがご都合主義というやつです。そう簡単に、鉱石や石炭は得られませんし、腕のいい職人がホイホイ主人公に協力してくれるわけではないのですね。

まぁ、私も詳しくないですが、「なろう系」の小説で興味深いのは、主人公がみなコーチングや経営的視点で異世界の住人を見ているところです。指導者や社長目線ですね。細部をよく見るのがエンジニアなら、指導者や経営者は全体がよく見えます。最終的には、魔王になったりしますしね。そんな人の出来た魔王がいていいものか?疑問ですが。ともかく、同じ世界でも各々の見方をかえると違った世界が見えてきます。物事を考えるときに、今までの見方と変えるために、それこそ例えば「転生したら、、、、」と考えてみると、世界が違った見え方にかわるかもしれませんよ。

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