ダイヤモンドと私


 

■ダイヤモンド
ワシントンD.Cのスミソニアン自然史博物館を訪れた際,インド産の世界最大44.5カラットのブルーダイヤモンドをはじめとする多くの有名な宝石を見ることができた.40カラットから1200カラットまでのさまざまな宝石が集められていた.おじさん曰く,ワイフが宝石指輪をねだるとここに連れてきて,目の保養をさせ自分が買うのはかなりちっぽけなものだと言うことを認識させるとのことである.
現在,半導体の王様はシリコンである.20世紀後半の技術の進歩は著しいが,これに最大の貢献をした物質はシリコンであった.だが,21世紀はカーボンの時代と予感する.化学的に言えば,ダイヤモンドはシリコンと同じ周期率表4B族に属する炭素である.
ダイヤモンドが使われる用途のほとんどは,硬い・耐摩耗性に優れているという性質を利用しての工具であった.しかし,近年ダイヤモンドの材料開発を行う上で,大きな期待が寄せられているのは半導体素子である.ダイヤモンドは,それ自身では不良導体ではあるがほう素やリンを拡散させ,微細加工することで半導体素子にすることができる.簡単に微細加工といってもダイヤモンドは最大級の硬さを持つ物質であるため,容易に加工できず一般にオリーブ油で練り合わせたダイヤモンド微粉末と鋳鉄のラップ板を用いた機械的研磨による加工である.機械的方法に変わる加工法として,東京理科大学宮本岩男教授は原子・分子オーダーでの加工が容易なイオンビームを用いた研究を行っており,私も卒研,修士,博士後期過程の6年間宮本研究室にてダイヤモンドのイオンビーム加工に関する研究を行った.そこで,私は従来の不活性ガスのアルゴンを利用したイオンビーム加工の問題点を改善するため,ダイヤモンドに対して活性である酸素ガスのイオンを利用したリアクティブイオンビーム加工を行うことにより,スパッタ物理反応のみのイオンビーム加工の加工速度に比べ,リアクティブイオンビーム加工はその反応に化学的反応が相乗するため,約10倍程度の加工速度が得られることを見出した.他にも,新しい知見を見出したが長くなるので省略する.


■ダイヤモンドの分類
ダイヤモンドは結晶内に含有される不純物(窒素,硼素など)によってTa,Tb,Ua,Ubの4タイプに分類される.下記にその特徴とサンプルを示す.
■Ta型ダイヤモンド
0.1%程度の窒素を不純物として含有し,結晶中に薄板状に窒素が偏析していることが観察される.天然ダイヤモンドの大部分がこの型に属している.
■Tb型ダイヤモンド
この型のダイヤモンドも不純物として窒素を含有しているが,Ta型と異なりもっと分散していることが知られている.高圧の人工合成ダイヤモンドの大部分がこの型に属している.
■Ua型ダイヤモンド
不純物として窒素含有ないもので,天然のダイヤモンドには比較的少ないと言われている.この型のダイヤモンドは,光学的・熱的に優れた性質を有している.気相からの低圧合成(CVD)ダイヤモンドはこの型になっている可能性が強い.
■Ub型ダイヤモンド
一般に青色を示すダイヤモンドで,非常に純粋な結晶に特別な不純物(例えば,硼素)が加えられたものと言われている.半導体的な性質を持つもので,宝石としては非常に珍しいものと言える.合成ダイヤモンドの場合には,硼素を不純物として加えることにより合成が可能である.また,低圧合成では反応気体に硼素を含む気体の付加により青色のダイヤモンド膜の合成ができる.
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