H23年度 活動報告(眞柄)

自然科学研究機構 分子科学研究所 技術研修

 平成24年3月1日〜13日までの約2週間、 愛知県岡崎市にある自然科学研究機構分子科学研究所技術課で技術研修を受けました。 本研修では、技術職員の管理的能力開発と専門技術の向上を目的として、 以下の2項目を実施したものです。

  • 大学共同利用機関における教育・研究を、専門技術で支援する技術職員の現状を認識し、 実務や現場職員との意見交換を行うことにより、高専における技術職員の組織マネジメントに役立てるよう研修を行う。 また、分子研技術研究会の主催者側としての業務を通じて、技術職員に対する「研修」の企画・立案を実践的に研修し、 併せて研究会での技術発表も行う。
  • 本来業務の専門技術分野であるソフトウェア開発技術について、分子研と舞鶴高専のいずれにも将来的に有効活用できる開発課題を、 分子研の技術者との議論によって生み出し、それに基づいたシステム設計からプログラミング作業までの実務研修を行う。


専門技術研修

 分子の構造を表示するPGV(Polygon Viewer)NVIDIA 3D Visionを用いて 3D立体表示を行う。Linux(Fedora)環境では、同計算科学技術班のメンバーが実現できており、これをWindows環境に移植しました。
 ゲーム用のビデオカード GeForce ではなく、CAD などのワークステーション用途に設計された Quadro ビデオカードと 対応したディスプレイ、専用のメガネを装着することで飛び出しているように見えます。
 写真(裸眼)ではブレているように見えますが、メガネを通すと立体表示されているように見えます。


 Linux 環境では問題なく動作していましたが、Windows 環境では3Dメガネの同期が行えない問題が発生し、 ドライバやライブラリの見直しなど、その解決に随分悩まされました。 最終的には、通常のウィンドウモードでは動作せず、 glutGameModeString() と glutEnterGameMode() を呼び出す『フルスクリーン(ゲーム)モード』で動くことが判明し、 なんとか3D観察できるようになりました。

マネジメント研修

 分子科学研究所をはじめ、基礎生物学研究所および生理学研究所の技術課長と懇談を行い、 高専における技術職員の組織マネジメントに役立てられるよう情報交換を行いました。

  1. 基礎生物学研究所 技術課長との懇談
     基生研の紹介、基生研での技術科の位置づけ、課長職における組織のマネジメントについてパワポによる説明を受けたあと、 舞鶴高専での問題点やその課題に向けて、組織の長としての取り組み心得などをディスカッションさせていただいた。
     その後の施設見学では、各部署で作業を行う技術職員と直接お話でき、生物学の専門的な内容は理解出来ないものの、 作業に対する誇りを持った取り組み姿勢などを肌で感じ取ることができた。
  2. 生理学研究所 技術課長との懇談
     先に施設見学を行い、基生研同様、普段目にすることのできない大掛かりな実験装置などを見学した。 こちらは生物学ではなく人体のうちとくに脳科学の研究が多く実施され、実験中の場面にも立ち合わせていただいた。
     機器研究試作室では、現場係長との情報交換を行なった。 舞鶴高専の実習工場と同じような汎用工作機械を用いて実験装置の試作を行なっていたが、残念ながら私の関連する NC工作機械はほとんど使用されていないということで、紹介だけにとどめた。
     施設見学のあとは、基生研同様生理研の紹介や心得のディスカッションをさせていただいた。
  3. 総評
     分子研の技術課長をはじめ、残り2つの研究所技術課長と懇談することができ、大変有意義な時間を過ごせた。 課体制という組織形態や規模においても舞鶴高専の技術職員組織とは異なった形態のため、 そっくりそのまま参考になるということではないが、少なくとも組織の長としてのマネジメントに関しては、 部下の評定方法ひとつ取っても、いかに自分が井の中の蛙か、文書で上手く表現できないほどのインパクトを受けた。
     今後これを自分の中にどう取り込むかが大きな課題となるが、2週間のうちの半日だけではなく、 マネジメントに特化した中長期の実践的な研修の必要性を感じた。

機器開発技術班でのNCVC講義

 機器開発技術班の班長をはじめ4名の技術職員と1名の技能補佐員に対し、NCVCについての説明や使用方法のポイントなどについて、 講義を行いました。オブザーバーとして技術課長も同席されました。

  1. NCVC使用方法の実演
     プロジェクタを使用し、基本的なNCプログラムの生成方法とソリッド表示におけるコメントの挿入方法などを伝授した。 また、技術研究会で発表を行うパワポスライドの一部を紹介した。
  2. 情報交換
     実際に加工を行なっている技能補佐員様から質問を受け、NCVCにおける設定やCADの作図方法などについて回答した。
  3. 施設見学
     機器開発技術班の主任が製作したフィードバック制御型のサブミクロンNC加工機の説明を受けた。 こちらからは、簡易版CNC制御装置の販売元であるOriginal Mind社のCNC制御装置やCNC制御ソフトのMachを紹介した。
  4. Advance CADによる実演
     ひと通りの説明と見学のあと、機器開発班で実際に使われているAdvance CADをベースにNCプログラムの生成を試みるが、 DXF出力の際のレイヤ(クラス)名変更方法がわからず、NCVC側の暫定設定でそれを回避し、デモは終了した。
  5. Advance CADでのレイヤ名変更
     日を改め、ネット検索で見つけた変更方法を機器開発班にて実際に試したところ、NCVCと連携が取れることを確認した。 これでNCVCを使用するときは特定のクラスに作図することでAdvance CADからNCプログラムが生成可能となった。

分子科学研究所技術研究会

 分子科学研究所主催の技術研究会について、主催者側としての業務を通じて技術職員に対する「研修」の企画・立案を 実践的に研修し、併せて研究会での技術発表を行った。発表内容は分子研の 第18回分子科学研究所技術研究会を参照ください。



分子科学研究所技術課の各班長との懇談および意見交換

 学術支援班・低温技術班光技術班・電子機器ガラス機器開発技術班において、各施設の見学ならびに現場班長との意見交換を行いました。

低温技術班


光技術班



電子回路技術班



総評コメント

 舞鶴高専としては初めての試みであり手探り状態での研修でありましたが、 一方的に教わるのではなく、こちらからも技術提供を行うことによりお互いのスキルアップにつながったと思われます。 ボリュームの割には期間が短く非常に慌ただしかったですが、その分内容の濃いものとなり、全体的には非常に有意義な研修でした。

 貴重な体験をさせて頂き本当にありがとうございました。 今後も技術職員の交流やスキルアップでお世話になることがあるかと思いますが、何卒よろしくお願いいたします。