H24年度 活動報告(能勢)

平成24年度 国立高等専門学校機構 情報担当者研修会

概要

 平成24年度 国立高等専門学校機構 情報担当者研修会が1月9日〜11日に国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されました。本研修会は,情報関連業務を適切かつ効率的にすすめるために,情報共有と技術的知識の習得を目的として,毎年開催されています。

 専門部会や機構本部が中心となり高専の情報基盤整備が進められています。また,情報技術やサービスは日々進歩しています。本研修会では,一括調達された機器の説明や今後の予定,高専機構としてのIT資産管理や監査に関する説明などの連絡的なセクションと,クラウドサービスやサイバー攻撃,ソーシャルメディアや著作権などに関わる研修的なセクションが盛り込まれ,幅の広い研修会となりました。内容の一部と感じた点を以下に報告します。


所感

情報基盤整備について

 詳細は省きますが,今後も多くの調査や更新,設定変更が予定されてます。ほとんどがバックボーン,いわゆる裏方ですので,エンドユーザが振り回されることはそれほどなさそうです。しかしながら,サービスによってはログイン方法などが変更となりますので,周知・啓蒙に努めたいと思います。情報基盤整備が進むにつれ,エンドユーザにとっては利便性の向上,管理者にとっては業務負担の軽減につながると期待しています。

 今後導入が予定されているサービスに,学術認証フェデレーション参加が必須のものがあります。参加に伴い準備が必要ですが,設定方法や運用方法についても説明いただき,スムーズに進めることができそうです。

 その他に,高専機構として契約しているマイクロソフト包括ライセンスについて,今後の予定や利用できるソフトウェアについて説明いただきました。新しいものでいえばWindows 8やOffice 2013が登場しています。本校学生や教職員がメリットを享受できるよう準備とお知らせを進めていきたいと考えます。

クラウドサービス,ソーシャルメディアについて

 情報サービスやインフラの提供において,いわゆるクラウド化が進んでいます。ユーザビリティの向上に加え管理者は業務負担を軽減することができるなど,多くのメリットがありますが,データそのものの所在が不明確であり導入には慎重にならざるを得ません。「いつ変更されるか分からない約款によるサービス契約がリスクの1つとなり、導入に当たっては約款を熟読することが重要」とのお話でした。

 ソーシャルメディアについても,発展や利用者の増加はめまぐるしく,本校においても多くの方が利用していることでしょう。その一方で社会では,ふとした「つぶやき」がきっかけで個人を特定され,ネット上に個人情報をさらされるといった事例がしばしばみられます。本研修会では「従業者向け利用ガイダンスの作り方」という内容でご講義いただきましたが,学生に対する教育においても十分に有用なガイダンス例をご紹介いただきました。

まとめ

 3日間にわたる本研修は分野も幅広く,非常に内容の濃いものでした。一括調達機器の運用と個別調達機器の更新,新サービス開始への準備等が続きますが,本研修での内容を復習しながら進めていきたいと思います。


平成24年度 分子科学研究所 受け入れ技術研修

概要

 この研修は,自然科学研究機構分子科学研究所技術課が他機関の技術職員を受け入れ,専門的な研修を通して相互の技術力向上を図ることを目的として実施されています。平成24年9月3日〜14日の間,以下の2点を目的に,昨年度の眞柄総括に続いて参加させていただきました。

  1. 大学共同利用機関における技術職員の現状を認識し,意見交換を通して高専における技術職員の組織マネジメントに役立てる。
  2. 専門技術分野について,分子研での実例についてのレクチャーを受け,システム運用からプログラミング作業までの実務研修を行う。


現状の認識と意見交換 − 目的1 −

3研究所の施設見学と技術課長との懇談

 分子科学研究所と基礎生物学研究所,および生理学研究所を各技術課の課長にご案内いただき,現場の技術職員に説明いただきながら施設や機器を見学しました。あわせて,各技術課長と組織形態や取り組みについて説明を受け,技術職員としての心得や今後の方向についてお話しすることができました。



計算科学技術班打ち合わせ

 お世話になった計算科学技術班は,計算科学研究センターの大型計算機および研究所内ネットワークの管理・運用だけでなく,コンピュータに関わる様々な分野での技術支援で活躍されています。週1回の打ち合わせでは,毎回数名の方が自身の取り組みや業務の進捗状況を報告されています。また,他の班員からの質問や指摘を受け,活発に議論されています。

 初回の打ち合わせでは,ご挨拶させていただいた後,みなさんの取り組みについて聴講しました。最終日の打ち合わせでは,今回の研修での成果と本校のトピックを発表させていただき,議論を交わすことができました。


まとめ

 日ごろ関わることのない分野で利用される機器は見たことのないものばかりで,特に大型計算機,極端紫外光実験施設,動植物の飼育,生体磁気計測装置,MRIなどは非常に印象的でした。その道のプロである技術職員がそれぞれの機器を運用し研究や社会に貢献されていることは,同じ技術職員として誇りにさえ感じられました。また,自身の目指すものや目標が漠然としている中,目的を持って業務や自己研鑽に励んでおられる姿には感心させられ,スキルの高さだけでなく志の高さにも驚かされました。

 教育機関と共同利用機関という違いはあるものの,学ぶべきところは多く有意義な見学・懇談となりました。どの研究所の技術課においても,週1回は報告会が開催されています。報告会により,情報を共有できるだけでなく,報告者にとってはコミュニケーションや発表の訓練になります。本校の連絡会でも,活発な発言を心がけたいと思います。学生や教職員ありきの現在の仕事では,コミュニケーション能力が必要不可欠であり,日々の訓練でこの能力を高めることで業務が円滑に進められるはずです。あわせて,技術職員同士で密に連絡を取り合うことは組織力向上のための1つの方法であることを再認識しました。


専門技術研修 − 目的2 −

コンピュータルームの温度監視

 この研修では,Ethernetポートとウェブサーバの機能を持った温度ロガーを使用しました。温度ロガーの設定を行い,大型計算機の床下にLANケーブルを這わせ,設置した後にMRTGでのグラフ化を行いました。実際に利用される機器を設置させていただき,貴重な体験となりました。温度ロガーには簡単なものから高機能なものまでが市販されています。また,簡単なものであれば電子工作で作成することも可能です。数種類あるものの中から,本校での利用に効果的なものを検証したいと考えています。


ネットワーク実験環境の構築と運用実験

 メジャーなネットワークスイッチとして,Cisco社のCatalystが挙げられます。3750シリーズと呼ばれるL2スイッチとPCを複数台用意していただき,簡単なネットワークを構築しました。Catalystは普段から触っていますが,リンクアグリゲーションなど初めて設定する項目もあり,非常に勉強になりました。スイッチの各ポートを設定中に混乱することがあり,構成図などのドキュメントがいかに重要かということに改めて気づかされました。個人的にも検討中である実験環境の構築に向けて,大きな後押しとなる研修でした。


各種ツールの作成

 多くの時間を費やしたのが,この研修です。共同利用システムでのアカウント管理,使用状況管理,ログの読み方について詳しく説明していただき,これらに関わる業務を軽減するためのスクリプトを作成しました。ディスク使用量計算スクリプトに始まり,ログ整形スクリプト,Catalystの設定変更やconfigバックアップスクリプト,さらにそれのcgi版などをPerlを用いて作成しました。作成にあたりアプローチやコツ,正規表現について丁寧に指導していただき,スクリプト言語と向き合う有意義な時間となりました。普段からコーディングされている方にとっては簡単なものかもしれませんが,この手のハックから逃げてきた私にとって今後チャレンジするきっかけを与えてくれるスクリプトでした。


まとめ

 専門技術研修では,どれも業務で反映することができる技術を学ぶことができました。技術の引き出しが増えたことにより,業務遂行時やトラブル時には,以前より応用がきくようになったと感じています。


さいごに

 今まであまり意識することのなかった技術職員の職務と組織について再考することができたことと,業務に直結する技術力を向上させることができたことから,目標を概ね達成できたと考えています。これを日々の業務に活かすことができて初めて完全に達成したといえるのではないでしょうか。また,研修目的とは別に個人的に考えていた「課題とネタを持ち帰る」ことができ,非常に有意義な研修となりました。しかしながら,一方的にご指導いただいたばかりで,こちらから提供できる有益な情報や課題が無かったことが心残りです。

 研修を受けるにあたりご協力いただいた皆様に,この場を借りて深く感謝申し上げます。


国立高等専門学校機構 平成24年度 IT人材育成研修会

概要

 平成24年8月30日〜31日にCTCテクノロジーラーニングセンターにおいて開催された本研修会は,情報系機器についての知識と技術の習得を目的とした研修会でした。今回はコース1「Linuxネットワーク管理」とコース2「インターネットセキュリティ技術」の2コース制で開催されました。

 学校としても重要な情報セキュリティの知識と技術を持ち帰ることと,コース1は同等のスキルを持った教職員が多いことから,コース2を受講させていただきました。


所感

 セキュリティ対策の一環として攻撃者の手法を知ることも大切,という観点から,様々な攻撃手法を学び,実際に攻撃を実施し,その様子を観察するという実習を行いました。あらかじめ複数のサーバやPCが仮想的に作成されたPC上で,Linux端末からWindows端末への攻撃,Windows端末からLinuxサーバへの攻撃などを実際に行い,パケットの観察なども行いました。

 攻撃者は「事前調査」,「侵入」,「侵入後の行動(情報収集や証拠隠滅など)」の流れで攻撃を実施します。また,それぞれに様々な手法があります。知識としては持っていた攻撃による脅威も,実際にその挙動を確認することで改めてその恐ろしさを認識させられました。

 いわゆる中〜下位レイヤでの攻撃は情報系の担当者がサーバ・ネットワーク機器の設定を行うことである程度防ぐことが可能です。一方,上位レイヤで対策することも重要で,PC上ソフトのアップデートや機密情報の管理などは,教職員個人の意識にかかっていると思われます。

 本校情報科学センターで管理する機器を設定する際には,学んだことを反映できるように努めたいと思います。また,個人レベルでのセキュリティ対策,つまりPCを利用される方々についても,意識を持っていただけるよう働きかける必要があると感じました。攻撃手法に限ったことではありませんが,情報系の技術も日々進化を遂げています。常にアンテナを張って取り残されないようにしたいものです。


平成24年度 全国高専教育フォーラム

概要

 平成24年度 全国高専教育フォーラムが8月28日〜30日に国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されました。本フォーラムは,全国高専の教職員が一堂に会して成果発表や意見交換を行うことにより,教職員の資質の向上を目指すことを目的としています。

 以前開催されていた「高専情報処理教育研究発表会」が合併する形となり,情報系分野にも発表会が設置されています。28日と29日に,情報系分野における口頭発表と情報収集を目的として参加させていただきました。


所感

 初日は主に他高専の教育システム更新についての発表を聴講しました。それぞれの発表では,教育システム導入のあり方について考えさせられました。特に某高専の先生からの,「システム導入後,このシステムでどんなことができるのか?と問い合わせがあり,それに合わせて授業・実習が組み立てられているが,本来はどのような授業・実習を行いたいか意見を集め,それに応えられるシステムを導入するべきである。が,実際は難しい。」とのお話には,共感するところがありました。その他,ホームページや緊急時連絡システムの導入と運用方法についてなど,本校でも参考になる発表を聴講することができました。

 2日目には,「プログラミングコンテスト課題・自由部門におけるUSTREAM配信実施報告」と題し,口頭発表を行いました。USTREAM配信自体は他高専でも行われていますが,プログラミングコンテストでのUSTREAM配信や部分的にカメラを移動しながらの配信を試みたことが初めてでしたので,準備や配信での苦労話,成果と課題を報告しました。いくつかの質問も受け,特に今後会場校となる学校の先生方には少なからず興味を持って聴講いただけたと思います。

 Rubyというプログラミング言語で町おこしをされている市がありますが,その地区の高専もそれに関わって活躍されています。高専の特色を出しつつうまく地域貢献されている点に感心しました。その他の発表では,無線LANやネットワーク機器での認証についての発表が参考になりました。

 情報系分野以外でも本校教職員の口頭発表やポスター発表を聴講することができ,改めて学内での取り組みを再認識する良い機会でもありました。また,他高専の教員や技術職員とも意見を交わすことができ,有意義なフォーラムとなりました。


国立高等専門学校機構 平成24年度 第1回ネットワーク管理者研修会

概要

 平成24年度 第1回ネットワーク管理者研修会が6月4日〜5日に国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されました。本研修会は,情報関連業務を適切かつ効率的にすすめるために,一括調達される機器についての説明,情報共有,および技術的知識の習得を目的として開催されました。本校からは,芦澤教員,能勢の2名が参加しました。

 機構として一括調達された機器であるファイアウォールと認証サーバの説明,それに関わってスイッチのネットワーク認証や導入事例について説明がありました。主な内容と所感について報告します。


所感

ファイアウォールについて

 平成23年12月の研修会でも説明を受け,かつ本校には導入済みのファイアウォールであるため,大半が復習でしたが,新しい発見もありました。特に,数種類実装されているUTM機能についてよく理解でき,本校でもどれを適用するべきか検討する際の参考になるものでした。

 続いて他高専での導入事例の紹介がありました。紹介された高専も本校と同じ時期(平成24年3月末)に導入されています。導入当初に発生したトラブルの症状と,その解決方法は本校と全く同じものでした。今後導入される高専の方にとっては,導入時のトラブルを減らす大変参考になる事例紹介であったと思います。このような情報を共有する場の大切さを感じました。

認証サーバについて

 ファイアウォール同様,復習になっただけでなく細かい説明もあり理解が深まりました。本校では導入後,学内サービスとの連携は見送っており,平成24年度末サーバ群更新時に本格稼働予定です。しかしながら,WEB給与明細システムとの連携が7月から開始され,部分的に運用を開始しています。

 他高専の導入事例として紹介された,メールサーバとの認証連携時のトラブル事例は,本校でも注意すべきポイントがあり参考になりました。

ファイアウォールのハンズオントレーニング(実習)

 2日目の午後,会場を移して実施されたファイアウォールのハンズオントレーニングに参加しました。実機にPCを接続し,初期設定やVDOM,UTMの設定などを行いました。業務で操作していますが,普段操作することのない設定も実習することができ,貴重な体験となりました。やはり実機を用いた実習形式は得られるものが大きいと感じました。

その他

 機構本部より,共通システムのネットワーク経路変更,導入済み一括調達物品の各種設定とメンテナンス,および今後の予定について連絡がありました。これらは皆さんの業務を支える重要なインフラですので,トラブルを最小限に抑えられるよう,準備していきたいと思います。