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710 2017

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公開シンポジウム『巡礼と聖地:その伝統と現代』を開催しました。[7月1日(土)・2日(日)]

 7月1日、2日の両日、公開シンポジウム「巡礼と聖地:その伝統と現代」が、舞鶴西市民プラザと松尾寺で開催されました。舞鶴高専の学生たち、舞鶴地元の歴史愛好家あるいは一般市民だけでなく、遠く韓国や東京、大阪からの参加者も迎えて、それぞれ45名、20名の参加がありました。
 初日は趣旨説明に続いて、松尾心空氏より「松尾寺と西国巡礼」の発表がありました。心空氏は、自身でも歩き巡礼を実践し、また二九番札所松尾寺住職として長年、西国巡礼に関わってきた経験を通して、巡礼における再生体験について語りました。出口三平氏は、「綾部という近代の聖地」で、近代の綾部が、大本教の本拠地であっただけでなく、グンゼ創業者の波多野鶴吉をはじめとしてキリスト教の影響が大きかったこと、そして日本で最初の世界連邦都市を宣言した町であったことを指摘し、綾部の聖地性をもたらしたものが出口王仁三郎の「物語」であったと述べました。岡本亮輔氏は「偽物がつくる本物の場所――青森キリストの墓を中心に」で、青森県新郷村において、キリストの墓伝説がいかに地元の観光行政と結びつき、さらに人々の意識にもどう根づいたのかをフィールドワークから分析しました。中川未来氏は「海を渡った四国霊場:植民地台湾の四国八十八ヶ所写し霊場」で、植民地期に台湾に建立された「写し霊場」の過去と現況について、精緻な報告を行いました。
 松尾心空和尚の洒脱にして深い体験談、出口三平氏の綾部にかける熱い思い、岡本亮輔氏の冷静にして軽妙な話術、中川未来氏の緻密な論証、そして粟津賢太氏の統一感あるコメント、あるいは栗田英彦氏の鋭角的なコメントなど、それぞれの持ち味を生かした発表に、聴衆も感銘を受けていた様子でした。
 2日目は、松尾寺方丈に舞台を移し、京都工繊大の先生お二人より発表いただきました。矢ヶ崎善太郎氏は「松尾寺の建築」で、享保15年(1730)完成した本堂の特徴をまとめた上で、近世社寺建築の時代性(構造から装飾へ)あるいは地域性(播州・丹波の大工集団)を指摘したものです。岩本馨氏は「西国三十三所順路考」と題する発表で、順路の政治的、宗教的背景を分析したもので、歴史学的に確実な記録として最古のものとされる『寺門高僧記』における覚忠の巡礼(1161)を取り上げ、巡礼道の高低差といったデータも活用しつつ刺激的な発表でした。終了後は、松尾寺のご好意で宝物などを拝観させていただき、2日目も充実したシンポジウムとなりました。
 アンケートでは「心空さんが宗教の答えるべきものを明確にもっておられるのに感心しました」「改めて「信仰」が歴史文化の中で持つ位置づけを再確認しました」「地域と宗教という今まであまり丹後では考えられていなかったことが取り上げられ、大きな意義がある」「工業高専主催でこのような人文学の深い内容のシンポが行われることにたいへん意義があると思いました」などの声が寄せられていました。
 末尾になりましたが、今回のシンポジウム開催にあたってご協力いただきました清水厳三郎先生ならびに松尾寺様に深く感謝いたします。

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